82年生まれ キム・ジヨン 人生の重さについて
…。ああ。
電車の中で言葉を失った私は、
ただ流れる風景を見ることしかできずにいました。
生きることの重さが…
性別だけで変わってくるという事実と、その事実に向き合ったことも、いや気づくことも出来なかった自分への嫌悪感が風景のように次々と自分を襲い掛かってきます。
理不尽な社会と、
見て見ぬ振りをする過去の自分と、
傷つきながら生きてきた彼女たち。
当たり前ではないことが、
当たり前のように思ってた時代と
その時代のせいにしている自分への幻滅が
走馬灯のように思い出を書き換えていく。
…。あ。…。あ
深くて短い、
言葉にならない重いため息。
我慢するしかなかった、いや選択肢すら与えられなかった多くの女性の人生が、
昔も今も、そしてこれからも続くことの重さ…。
それは私の母の重さでもあり、
妻の重さでもあり、
そして2歳になったばかりの娘の重さでもあることを、私は知ろうともしなかった。
私は傍観者であり、共犯者。
これからもずっと知らずに生きていったかもしれない…という恐ろしさと、期待すらされない諦めから来る彼女の虚しさを目の前にして、私は混乱しています。
一度も生理を経験したことのない男がそれが何十年も続くことの意味を。
妊娠と出産の不安と、仕事と自分の人生への不安を。
そして多くの彼女が当たりまえのように諦めるしかなかった現実と、男という思考の暴力に私はどれだけ真剣に向き合ってきただろうか。
泣き崩れている彼女の話を、
どれだけ真剣に聞いていたのか。
それが私と未来への不安であることも知らずに、ただ女性だけの感情かのように思い込んで適当に慰めたりはしていなかっただろうか。
言葉だけの夢とその場しのぎのジョークで笑い飛ばしていた私を彼女はどんな思いでみていただろうか。
…。あ。
★★★
今日、新しい人生をスタートした妻の生き生きとした姿には、
10年前の彼女でも、2児の母でもない、もう一人の彼女がいました。
居場所をみつけ、頑張っている姿に嬉しさとほんの少し寂しさを感じる夫です。