(日記) 慣れと沈黙
雲の隙間から漏れ出る日差し。
青い葉っぱの上で輝く朝露。
今にも消えてしまいそうな透明な月。
穏やかで激しいその空き地には、
夜明け前の静けさが…
人が決して作り出すことのできない
沈黙が充満していた。
しかしそれは…
輝く朝露や透明な月への感傷でも、
そうやって自分が見たいものに集中し、
特定の何かを見つめることではなかった。
またそれは…
数えきれない昨日から探し出せるものでも、
自分のちっぽけな知識から見つけ出せる
ようなものでもなかった。
それは決して…
慣れることのできない何かであり、
静けさという言葉でしか言い表せない
何かであり、
そしてその言葉さえも…
全て無意味であることに気づくとき、
そのとき初めて訪れる、
静けさであり、沈黙であった。
***
慣れること。
新しい環境に適応すること。
新しい人間関係に溶け込むこと。
未知の何かと対面するとき、
人はその何かに慣れることに
多くのエネルギーを注ぎ込んでいた。
未知の何か。
経験したことのない何か。
知らない、そして不慣れな何か。
その不確実性に
その不予測性に
その不安定性に…
人は決して…
その何かをありのまま見つめようとせず、
そこから不安と恐怖を感じ、常により確かで、
より安心できる何かへ逃げようとしていた。
また、不安と恐怖に居場所を失った思考は、
それらに「問題」や「ストレス」という
名前を付けては、ありもしない幻を
作り上げていた。
そして人は、その幻と自分とを分離させ、
まるで別個に存在する一つの事実のように
それを眺め、その解決に、それからの逃避に
苦心していた。
しかし思考は、自分を苦しめているのは、
他ならない自分自身であることに…
自分と苦しみは別個ではないことに...
死ぬまでそれを繰り返していることに…
その果てしない悲しみと虚しさに
気づかなかった。
***
慣れること。
不安と恐怖が自分に問題となるや否や、
それを解決するための目標が現れるや否や、
そこには常に、その目標から得られる
何かの結果や報いが、そしてそのための
努力があった。
しかし、その目標が達成されたとき、
その努力が終わるとき…
人は、決してそこにとどまることなく、
その穏やかで静かな平穏を保つことなく…
新たな恐怖と不安を見つけ出し、
新たな問題とストレスを抱えて
自分を苦しめはじめる。
そしてその繰り返しが...
「生きること」「人生である」と
何度も自分に言い聞かせていた…。
***
気がつくと、
その空き地は、黄色い輝きで溢れていた。
あちらこちらに咲いた雑草と花は、
まるで子供のように陽光に喜び、
生き生きしていた。
そしてその上を、心地よい鳥のさえずりが
行き交っていた。
あの月と同じように…
思考が、その姿を消したとき、
そこには相変わらず…
決して慣れることのない
全く新しい静けさと沈黙があった。
そして…それが「人生」かどうか…
…それが「生きること」かどうかは
…単なる言葉に過ぎない、
無意味さ、そのものでしかなかった。
* 寝れない夜に feat.yama | くじら