偶然…そう、いつも偶然。
偶然...
遮るものは何一つ無い
昼前の落ち着いた空を、
いつもの公園で...
偶然...見上げる。
そこには…
何度も首を回さないと...
その輪郭すら掴めない、
パノラマのような景色が...
はしゃぎまわる子供、
舞い上がる砂埃、
通り過がりの人や犬、
静かに落ちる枯れ葉、
子供を見守る親の背中...
ありふれて...つい...
見落としてしまう、
何気ない日常の上に...
アンバランスな対比と
圧倒的なスケールで
果てしなく広がる。
…
それはまるで...
天国か何かを眺めるような、
誰も考え出すことのできない、
壮麗で夢幻的な何かのように..
自分を見ろなど何も言わず、
ただ...本来あるべきところで...
地上のあらゆるものに向かって
ただ...広がっていた。
それは...
ただそこにあるという言葉以外…
全て無意味だと、いや...
人の言葉というちっぽけな器では
到底説明できない何かなのだと...
そう言わんばかりに...
それを眺めるものに...
言葉を超えた何かで心を揺さぶり、
次々と問題を見つけ出す思考を、
果てしのないお喋りの独り言を、
今日も永遠と動き回る思考を...
一瞬にして全て取り払うのである。
...
よりきれいに…
よりリアルに...
最先端のテレビやカメラ、
高画像のプロジェクター...
人間が発明し、進化させてきた
どんなテクノロジーでも...
目の前に広がるあの景色を...
再現することは決してできないだろう。
夜空に広がる無数の光が、
それぞれ異なる輝きと色で
散りばめられた星空の美しさは、
絶え間なく変わり続ける、
奇跡のようなリアリティーは…
決して作り出すことはできないだろう。
あの雲や星...数え切れない命、
自然がもたらすあの美と秩序を...
片っ端から破壊しつつある私たち人間が…
小さいテレビや何かの中で、
その美しさに唾を飲み込み、驚嘆し、
その大切さと必要性に涙を流しているのは
何とも皮肉なことだろう。
どうして...
私たちの日常に溢れた景色や自然は、
人間は決して作り出すことのできない何かは...
うまく編集された高画質の
ドキュメンタリーの中で、
眺め、楽しみ、笑い、涙を流す、
もう一つの娯楽になってしまったのだろう...
スローモーションで動く
野生動物の力動感とその物語を、
どうして私たちは…
日常の中で、自然の中で見つけようとせず、
テレビや小さいスマホの中で…
おやつを片手に鑑賞しているのだろう…
またその短い鑑賞が終わると、
ほんの少しの余韻すら噛み締めず...
無数の壁に取り込まれた、
息苦しい建物の中に引きこもる、
自然とは無関係な日常を...
そういった人生を送っているのだろう…
…
***
柵の向こうから聞こえてくる
心地よい鳥たちのさえずり。
古い墓の近くで倒されずに
偶然残っていた大きな枯木が…
誰も気にしない公園の片隅で
小さな森をなしている。
音もなく揺れ動く葉っぱの上で、
無数に飛び交う溢れる生命力。
激しい風に息を潜め、
互いを呼び合うあの鳥こそ…
枯木を住処に遠くの空に旅立つ彼らこそ…
あの空…あの天国の主かもしれない。
...
宙に浮く蜘蛛を…
一瞬一瞬変わり続けるその何かを…
まるでそれを眺めるために
生まれてきたかのように...
全身で眺める息子の輝く瞳の中に...
夜空できらめくあの星々が…
果てしなく広がるあのパノラマが…
奇跡のようなあのリアリティーが...
偶然...
そう、いつも偶然...ただそこにある。
🎵 祝いのうた | 森ゆに