(旅行記) ある島で見たもの。
小さい窓から聞こえる、
どこか懐かしい店員の声。
長い列に我慢できずに
海を眺める大きな瞳。
綺麗に手入れされた、
古い船に響く軽い足音。
すご〜〜い!
絶えず軌跡を残す、
水しぶきのように...
透き通った子どもの声が、
海風の中に広がる。
...
山道を難なく登る、
バスの窓に映るもの。
見慣れない景色に、
突然不安そうに
僕を眺める娘の気配。
...
たか〜〜い!
(たかい...)
チケット代って
そんなもんだよね...
諦めて財布を眺める親の隣で
弾けて景色を眺める息子と娘。
…
色とりどりの花畑と丘。
山のすべり台に漂う甘い香り。
その全てに向かって
リミット無しに走り出す、
無邪気で元気な後ろ姿。
花の名前や季節感、
人気スポットや珍しいもの、
そういった知識がなくても...
花と飛び交う鳥たち...
その全てとの関係を、
最初から知っているかのように
笑顔を咲かせる子どもたち。
…
...
あらゆるものが、
あらゆる出来事が...
完璧な姿で、
完璧なタイミングで、
ただそこにあることに
気づくある日。
その完璧さは...
何か決められた基準や条件を
満たしているからでも、
その日の気分や好みに
たまたまピッタリと
当てはまって感じられる、
何かの満足感でもなく、
そう、ただ...
基準そのものの不在...
完璧さを求める、
私がどこにも存在しなくなる時...
その時はじめて現れるもの。
…
…
あらゆるものが、
あらゆる出来事が...
本来の姿のままで、
ありのままありつづける
そのことに気づくこと。
完璧。
それを何と表現したらいいか...
迷わった末に仕方なく、
言葉を当てただけの...
そう...
僕が、ある島で見たものは、
まさに...あの名付けられない何かだった。
...
…
「空(幸せ)になる」
それは空になることを、
目標に掲げ、努力することではない。
そうではなく...
なることが止むときに初めて...
人は空になるのである。
努力が止むとき、
意思として現れた私というものが
止む(消える)とき...
そうやってならずになること。
絶えず自分の姿に気づく、
その受動的な気づきこそが...
空そのものである。
****
…
遠くから聞こえる、
全く新しい子供達の声。
長いロープと遊具に、
はしゃぎ回る天真爛漫な顔。
綺麗に手入れされた
古い親の顔に浮かぶ軽い笑み。
(... ...)
高ぶる感情が、
名付けられない何かが...
絶えず舞い上がる、
無数の花びらの中に広がる。
…
♬つきひ・浮