言葉であり、言葉を超えるもの。
絆、
愛情、
希望、
情熱、
未来...
...言葉。
どこかで聞こえてくる言葉。
スマホや本で眺める言葉。
自分に絶えず...
心地よい感覚や不快感を
呼び起こす言葉。
2キロ足らずの小さな脳の中で
数え切れない神経束の中で...
そうやって跡を残し、消えていく言葉。
...
決して...リアルなものでも、
何かの実体があるわけでもない、
単なる記号でしかない言葉。
しかし胃が食べ物を消化するように...
無数に張り巡らされたニューロンを使い、
噛み砕き、記号から何かを生み出す言葉。
喜び、
落胆、
苛立ち、
怒り...涙。
そう…
脳というやつは...
毎日...毎日...
決して休むことなく、
膨大なエネルギーを
使い果たしながら
ただ…ただ…
言葉を飲み込み、消化し、
そして思考を生み続ける。
…
美しい自然を眺める瞳、
危険を俊敏に察知する鼻、
暑さや寒さ、刺激から身を守る肌、
アルコールを熱心に分解する肝臓...
そのどれもが...
自分と繋がっている体を守ることに、
それ自身を傷つけないことに熱心なのに...
そうやって他の臓器全てが
力を合わせて必死に送ってくれるシグナルを...
脳というやつは…
その中から快を選び、苦を避けようと、
自分が描くイメージで眺めたり、
もしくはその全てを無視する。
そうしているうちに...
体(自分)を守るという観点とは、
全く真逆のことを仕出かしてしまう。
...
思考。
安全を求めようともがく思考。
自分が持っているものを失うかと思い煩い、
不安がり、比較し、怒る思考。
...
その思考行為こそ、
自分を…自分ではない他人と区別し、
比較し、敵対し、その全てである、
イメージを作り上げて非難する、
不安から生まれた思考と行為こそ…
まさに…
一生をかけて探し求めてきた
安全や幸せというものを脅かす、
最大の脅威であることを…
不安→思考→行動→不安という
無限ループを作り出す原因であることを…
思考は…いや、人の脳は
果たして気づくことができるだろうか?
…
もし数千万、数十億の人が、
それと同じループの連鎖を…
ただ…ただ…繰り返しているだけなら…
自然の中にある、
あらゆる命のように…
生きるために自分の限界を知り、
懸命に自らを変えてきた…
あの進化と呼ばれる何かを…
はたして...人の脳は…
遂げてきたと言えるだろうか?
それとも、
それは…進化というより、
自らを滅ぼす退化のような何かに…
辿り着いてしまったのだろうか?
…
***
全く違う、脳の使い方があるだろうか。
不安から逃れ、
安心安全を手に入れようと…
誰かを敵対するそのプロセスがもたらす
新たな不安を全く生み出さない使い方が...
危険から身を守る、
臓器の機敏さのように、
目の前にある危険を
ありのまま見ることなく…
不安や心配、好き嫌い...
感情やちっぽけな価値観で眺め、
ゆがめてしまう、その危険性に
毎瞬間…毎瞬間...知覚する使い方が…
あらゆる感覚(五感)に、
またそこから生まれる、
快と苦への反応や思考に…
一喜一憂し、好きだ...嫌いだと…
性急に言葉にしない使い方が…
特定の反応にではなく…
全ての反応に気づき…
その感情全てを十分味わい…
決して跡を残さない使い方が…
…
目の前で今…
苛立ち…
悲しみ…
笑っているあなたに気づき…
同時に自分の姿に気づく生き方が...
言葉。
思考。
…その果てしのない、
エネルギー消耗とは無縁の...
そういう生き方があるだろうか?
そう...
言葉でありながら、
その言葉を超える…
…「愛」という名の…生き方が...
♬ 風のつよい日に | 森ゆに